鋤柄ふくみ - 二重の森
2026.9.26 – 10.31

ケンジタキギャラリー名古屋では、9月26日(土)より鋤柄ふくみの個展「二重の森」を開催いたします。
鋤柄の作品は、一見すると抽象画やシュルレアリスムを思わせる異次元の世界のようでありながら、注視すると草木や人などの具体的なイメージが立ち現れます。この独特の世界は、「平らなところに平らでないものを描く」という絵画の性質を、身体的な行為を通して探ることから生まれています。
鋤柄はキャンバスを「耕す」ように手を動かし、線を引き、絵の具を塗り重ねます。現実と意識下のもの、遠くのものと近くのものなど、異なる空間やイメージをひとつの画面に引き寄せ、切り、繋ぎ合わせながら、平面の上に複雑な層をつくり出していきます。
そうして生まれる密度の濃い画面は、内と外が入り混じるような深い奥行きを持ち、見る者の視線を作品の中へと力強く引き込みます。
ケンジタキギャラリーでは初めての展覧会となる本展では、近作を中心に展示いたします。
鋤柄ふくみが描き出す絵画の世界を、ぜひご高覧ください。
絵は面白い。平らなところに平らでないものを描いている。折りたたんだりつぶしたりして世界を平らな面に押し込めている。遠くのものも近くのものも同じ場所にくっつける。大きく描く/小さく描く、放射線状に並べる、球いものを平らに切り開く。
絵は昔から世界を平たいところに押し込める発明をしている。本当は私たちには目が二つあって右と左についているから、単眼のカメラみたいに世界を見ることもできないのに、写真のような絵を「本物そっくりだ」と言ったりする。絵の中では本当のことも本当でないことも同じように存在できる。それで墓の中に絵を描いてあの世に送ったりする。
線を引く。蔦のように家の外も中も這い回る。線が閉じればかたまりのある物になる。細くて硬いペン先は空間を切る。線は無限に切り進むから、紙は一見変わらず一つの平らな面のままなのに、捻ったり裏返ったりしながら空間を広げていく。
線にのって私はしたことのないポーズもできる。目を伸ばして自分の背中に触ることもできる。断ち切られたところは別の空間を開く入り口になる。
絵の具をつける。奥に掘り進むように絵の具で進んでいくと、掘っているのに絵の具は積み重なって盛り上がる。絵のなかで、山も穴も同じようになる。
あっちからくるものとこっちからくるものをくっつける。互いに押し合って拮抗すれば、背中合わせに立つように宙に浮く。網目を通して向こうから出てくるものがあったり、こちらから潜り込んだりするものがある。あっちもこっちも本当は粒々の集まりだから、あっちの粒々とこっちの粒々がかみ合えばすり抜けたりできるんじゃないかと思ったりする。
自身の体を使って感覚したり作用したりする、行為そのものによって絵を作っている。
描いたり切ったり別のものを繋げたりしていると耕してるみたいだなと思う。現実も意識下のものも取り込まれていく。向こうからやってくるのを待っているような時間もある。絵に振り回されて、抵抗してまた描き進む。まるで人まかせのようだけどこれはこういう絵になるんだとわかってくる時がある。そういう時は面白くてたまらないのでできることならずっと触っていたいと思う。
近作を中心に、キャンバスの絵、雑誌、粘土、絵になる前の断片のようなものなどを展示します。
2026年9月6日 鋤柄ふくみ
