田島 圭 - 自然数を引く –

takikenji

2026.7.3 – 8.5

自然数を引く ―同じ1日―〈299mm, 2026年5月31日〉
顔料インク、ケント紙

ケンジタキギャラリー六本木では、7月3日(金)より田島圭の個展を開催いたします。

田島がこれまでに制作してきた作品の中には、《ロールペインティング》と題されたロール状キャンバスの作品や、絵の具とマスキングテープをもちいた塊のような作品、色をのせたキャンバスが画面上に立体造形的に重ねられた《スタッキングペインティング》などがあり、見るものに絵画の平面性とは何かを問いかけます。

一見抗うようにも見えながら、田島は「描く」ことにこだわって表現を模索し、独自の着眼による理論をもとに絵画的空間へと描出してゆく制作を続けています。

ケンジタキギャラリーでは初めての展覧会となる本展では、田島が現在集中的に制作を継続している《自然数を引く》を展示いたします。


自然数を引く

自然数を引く ―同じ1日―〈299mm, 2026年6月27日〉
雁皮紙、松煙墨、額

《自然数を引く》は、「完全な四角形を描くにはどうすればよいか」という問いから始まった。

私は自然数を線の長さとし、白い紙の上に線を引いている。最初は1mm(点)、次は2mm、その次は3mmというように、自然数に従って線の長さを増やしていく。線と線のあいだには1mmの余白を置き、定規に沿わせて線を引く。線が画面幅に収まらない場合、続きは下の段へ送る。あらかじめ定めた画面の高さに到達した時点で制作を終え、最後に引いた線の長さを作品のタイトルとする。

制作は規則に従った単純な反復である。

制作を始めた当初、誤りに気付いた作品は破棄していた。数を読み違えた場合、作品は成立しないものとして扱い、最初から描き直していた。しかし、どれほど慎重に制作しても、誤りは起こる。人は気付かないうちに数を読み違え、身体もまたわずかにずれ続ける。その差異は画面の中に残る。

完全な四角形を求めて始めた制作を通して、私の関心は認知や身体、時間の蓄積が現れる画面へと向かうようになった。

2021年、ある若い作家との作品交換のために、小さな《自然数を引く》を制作することになった。当時制作していた《塗り絵》シリーズで用いていた寸法を転用したところ、その作品を一日のうちに完成させることができた。

その作品は、150mm幅の画面の中で、最後に引いた線が画面幅の倍にあたる〈300mm〉に到達して停止した。それは意図して得られた結果ではなかったが、その一致に美しさを感じた。

あらためて同サイズで制作を試みたとき、学生時代に豊田市美術館で見た河原温のTodayシリーズの企画展示を思い出した。そこでは、その日の日付が描かれた作品が、その日に1点だけ展示されていた。私はその展示に感動し、その体験は長く記憶に残っていた。

一日で画面が成立する《自然数を引く》。それは学生時代の感動体験と重なり、《同じ1日》は始まった。

現在、《自然数を引く》には、複数日にわたり制作を継続する作品と、一日のうちに完結する《同じ1日》がある。作品の時間構造は異なるが、いずれも自然数を引くという同じ行為から生まれている。

制作を続けるなかで、ときに思いがけない構造や一致が現れることがある。その体験は私にとって発心となる。

作品は停止する。しかし自然数はその先にも続いている。

2026年6月6日 田島圭 

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